【リログループ】海外人材を生かす日本企業の在り方とは? 福利厚生や環境整備から考えるグローバリゼーション


海外人材の採用や企業内での日本人との共生は、深刻な働き手不足に陥る日本社会を維持するために、全ての企業が検討すべき課題です。一方、海外人材の視点に立った環境整備に危機感があったとしても、それに必要な知識やバックオフィスのリソースが足りないという企業も多いのではないでしょうか?

「外国人と共に歩む未来のビジネス」をテーマに開催されたGLOBALIZED 2019では、企業の国際化を本業外の業務サポートによって支援する株式会社リログループと、それに伴う国際的な福利厚生等の動向について、取締役(CIO 最高情報責任者)河野 豪氏が語りました。本稿では河野氏の講演をダイジェストでお届けします。

 

株式会社リログループ 取締役(CIO最高情報責任者) 河野 豪 氏 1997年にリログループ入社。入社4年目で社内ベンチャー企業として株式会社リラックス・コミュニケーションズ立ち上げ。 2006年同社執行役員、2012年株式会社リロクラブ取締役、2016年同社代表取締役社長、2019年4月より株式会社リログループCIO就任。

 

日本の未来における海外人材の必要性と、日本企業が始めるべき準備

少子高齢化と人口減少、それに伴う働き手の不足。これらは深刻な課題として認識されていますが、日本企業は具体的にどのような対策をすべきでしょうか?

打開策の一つとして挙げられる海外人材の活用は、多くの企業が着目しつつも、どの程度の現実味を帯びたものなのか、何を準備すべきなのかが明確ではない場合も多いようです。まず、いくつかのデータをもとに、日本における海外人材の影響力について考えてみましょう。

日本の人口は2020年現在、約1億2千万人です。20年後の2040年には1億1千万人になると言われており、その数字からのみでは人口減少に関する危機感はあまり感じ取れません。しかし、人口分布の内訳では15~59歳の元気な働き手が約2千万人も減少するという想定が極めて深刻なのです。

元気な働き手となる人口が激減する一方、人口の5人に1人が75歳以上になります。さらに、国民の10人に1人が認知症になる見込みも踏まえると、介護をする人材も含めた労働人口は圧倒的に足りないことがわかるでしょう。

今後日本の経済成長を持続させるためには、2千万人の海外人材を受け入れる必要があると言われている昨今、海外人材と共に働くための環境を整えることは、国内全企業の課題です。


投資家ジム・ロジャーズは、経済国家である日本を存続させるためには、子どもを増やすか、移民を増やすか、生活水準を下げるかしか選択肢が残されていないと語りました。このうち最も現実的な手段が、海外人材の活用ではありませんか?

こうした現状を踏まえ、日本企業の生存戦略は2つに分かれます。1つめが、人口増加や経済成長の著しいアジア市場へ進出し、国際化を目指していくこと。そして2つめが、国内の海外人材活用に踏み切り、積極的な外国人採用や、共生のための環境整備に努めることです。

いずれの場合も、海外人材から企業が評価されなければ働き手を確保できません。※IMDビジネススクールの調査(2016年)によれば、日本の「働く国としての魅力」は、分析対象である61カ国のうち52位という結果です。今後、日本企業は海外人材が働く国として魅力的であるための努力をしなければならないでしょう。

リログループの主な事業、企業の国際化支援

リログループは、日本企業の本業外の業務をサポートし、企業のグローバル展開を支援していくことを使命としています。

事業の一つである借上社宅・賃貸管理事業では、企業にとって煩雑になりやすい契約手続きや物件管理業務をリログループで代行。リログループ名義で借上から全業務を請け負うことは、委託企業にとっては人事部の手間を削減するだけでなく、海外人材の移住を円滑にする効果もあります。

企業で外国人を採用しても、大家さんが外国人の受け入れに消極的な場合、住まいが定まらない問題が発生します。大家さんの主な不安は、家賃滞納や言語の壁、文化の違いから生まれる生活基準のギャップです。

リログループ名義での借上と移住者への転貸を行えば、大家さんの不安を解消しつつ海外人材が住まう場所を確保できます。また、移住者に母国語を通じて不動産の仕組みや日本の生活習慣について説明することで、安心して外国人が暮らせる環境を作ります。

日本企業から海外へ赴任する方々のサポートも、リログループの事業の一つです。国際化に伴って海外赴任世帯は増加しており、2019年3月には8,766世帯が海外に旅立ちました。各国の就労ビザ取得や引っ越し支援、赴任中の日本の物品購入の仲介などを私たちが代行します。

リログループは国内外での複合的なサポートを通じ、企業の海外展開を広く支援。業績としては19期連続増収、10期連続最高益更新を果たし、時価総額4,500億円に達しています。時価総額500億円以上で10期連続最高益かつ毎期15%以上の成長を続けているのは、日本の上場企業のなかではたった3社しかありません。その一つであるリログループは、極めて成長率の高い会社と言えるでしょう。

複数事業の多言語対応にWOVN.ioを導入

こうしたリログループの様々な事業を展開するにあたり、多言語化は必要不可欠ですが、WOVN.ioを導入することで、効率的かつ平等な情報発信を実現しています。

例えば、先ほどご紹介した借上社宅・賃貸管理事業で扱っている不動産情報検索サイトは、英語と中国語に翻訳。また、海外赴任事業において、赴任した世帯の領収書をチェックする業務にもWOVN.ioの活用を検討しています。海外赴任中の経費等が企業の規定にあったものか判断する作業を、OCR機能と掛け合わせて自動化することが今後の目標です。

ここで、多言語化が極めて効果的だった事例として、福利厚生事業を紹介します。リログループは、企業規模を問わず福利厚生に取り組めるよう、複数社を束ねた福利厚生代行サービスを行っている会社です。大企業も安価で選択肢の豊富な福利厚生に取り組めるため、現在は外資系企業を含めた約1万社が本サービスを導入しています。

この福利厚生代行サービスの中で近年ニーズが高まっているのが、多言語化です。日本語での検索や対応が難しい海外人材でも福利厚生を利用できるよう、私たちは今まで日英それぞれ情報サイトのテンプレートを作成し、人力で翻訳を続けてきました。しかし、この方法は更新の手間と開発コストがかさみます。

そこで福利厚生代行サービスの英語サイトを廃止し、日本語サイトに一本化。WOVN.ioを介し英語・中国語の2か国語への機械翻訳を実施。この改革により、提供側のリソースを削減するだけでなく、利用者側も情報格差なくスムーズにサービスを利用できるようになりました。

現在、WOVN.ioによる自動翻訳の精度は極めて高いのですが、重要な情報が間違えて伝わってしまうリスクを避けるため、高い言語スキルを持つスタッフによる固有名詞の辞書登録や、掲載内容のチェックと修正を行っています。その結果、正確性を担保した多言語による情報提供が実現したのです。また、今後サイト全体に対して大規模な修正が必要になったとしても、ローコストで修正をかけられます。

こうした多言語化によって、海外人材による福利厚生の利用率は5倍に伸びました。ちなみに、フィットネスクラブの利用とベビーシッター、国内のリゾート利用が海外人材に人気の福利厚生サービスです。

レコグニション制度による、海外人材を想定した従業員のエンゲージメント向上

最後に、企業文化の観点から海外人材の働きやすさについて考えます。

欧米では従業員の評価をポイント化し、従業員同士がそのポイントを送りあえるシステムが普及しています。ポイント付与のタイミングは多様で、無遅刻無欠勤に対する評価、会社の健康保険料低下に資する健康維持への称賛など、従業員個々による努力があれば全てがポイント支給の対象となります。中には、誕生日のタイミングで上司から従業員へポイントを付与する企業もあるそうです。

従業員同士が個々の努力や実績をレコグニション(=承認・賞賛)することは、欧米では極めて重要視されています。レコグニションは従業員の士気を高め、エンゲージメントを向上する効果があるからです。

そのため私はレコグニション制度を、日本企業においても導入すべきと考えています。国籍を問わず、直接的でわかりやすい評価システムは今後を担う若年層の離職防止にも繋がりますし、なにより欧米の評価方法に慣れた海外人材が、日本企業で十分な評価を得られないと感じれば、モチベーションを維持することは難しいからです。

リログループは、このレコグニションの概念を福利厚生サービスにいちはやく取り入れ、事業化しました。お互いが感謝の気持ちを伝えあい、ポイントが可視化される従業員同士の交流ツールを提供しています。会社に貢献するキーパーソンを正しく評価することは、今後の働き手不足のなかで優秀な人材を確保するために必要な努力ではないでしょうか。


国際規模で起こる優秀な人材の奪い合いで、日本が勝つために

人口減少や少子高齢化に伴う労働環境変化への対応は、日本だけでなく世界各国が抱える課題です。一人っ子政策によって人口増加を防いでいた中国も、2015年を境に生産年齢人口が減少しつつあります。

国際化が進んだ世界において、優秀な人材は働きやすい環境に集中します。国籍を問わず多様な人材が心地よく働ける環境を作ることは、日本の働き手を確保する礎となるでしょう。

その手法である福利厚生や評価制度の改革は、企業と従業員の関係構築において特に重要です。リログループは海外人材との共生を考えていくソリューションカンパニーとして、これからも日本の未来のビジネスを皆様と共に模索していきます。


参照IMDビジネススクールの調査(2016年)

(執筆:宿木 雪樹、写真:taisho)

 

各セッションレポートは、「WOVN.io BLOG」にて順次配信いたします。
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