【セブン銀行】単なるATMや海外送金ではない、外国人の「不」を解消するサービスへ


セブン-イレブンやイトーヨーカドーなどにATMを設置し、多くの人に利用されているセブン銀行。社内では外国人スタッフを積極登用し、社外ではさまざまな外国人向けサービスを提供しています。

「外国人と共に歩む未来のビジネス」をテーマに開催されたGLOBALIZED 2019では、同社が目指す「外国人から選ばれる日本社会」の実現について、常務執行役員の大口智文氏が講演。本稿では講演の模様をダイジェストでお届けします。

株式会社セブン銀行 常務執行役員 大口 智文 氏
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。その後、新銀行東京執行役を経て、2008年セブン銀行に入社。
2018年7月より、常務執行役員 海外送金推進部担当役員。

 

「ATM前を通る方全員がお客様」。自然発生した外国人向け金融サービス

セブン銀行は2001年に創業し、2011年東証一部上場も果たしている金融機関。
但し、法人向け融資機能を持たないことから「セブン銀行=ATM」というイメージが強い方も多いでしょう。

セブン銀行はATMを、セブン-イレブンやイトーヨーカドーだけでなく、駅や空港などさまざまな場所に設置。その数は現在25,231台、提携金融機関数は616社。1日当たり220万人以上に利用されています(編注:数値は2019年6月現在、以下同様)。

そんなセブン銀行の「お客様」というと、ATMを利用する人という認識ではないでしょうか。しかし実際は少々異なる認識のようです。

セブン銀行のお客様と言いますと、ATMを使って手数料をいただいているわけですから、「ATMを使う方がお客様だろう」と思われることが多い。しかし、弊社では「ATMが置いてある設置先を訪れる方々」は、全員がお客様だと思っています。

セブン-イレブンや(グループ会社の)イトーヨーカドー、さらに他の設置場所を合わせると、一日に何千万人というお客様が弊社ATMの前を通ります。その方すべてがお客様です。もちろん、日本人でも外国人でも変わりなく「お客様」であります。

ATMの前を通る全員がお客様という考え方に照らせば、外国人向けサービスに取り組むことは自然な流れだったと大口氏は語ります。そんな中2007年ごろから外国人向けサービスを検討開始。最初に打ち出したのは、「ATMで日本円を引き出せるサービス」でした。

セブン-イレブンは日本に約2万店舗がありますが、実は海外を含めると6万店舗を展開しています。だから外国人が日本に来たときには、「日本にもセブン-イレブンがあるんだ!」と思うんですね。

それだけ親しみを感じていただいているんですから、日本に来られたら、その「セブン-イレブン」でATMを簡単に使って、お店でお買い物をしていただきたい。

具体的には、セブン-イレブンに気軽に入店し、セブン銀行ATMにクレジットカードを入れると、12カ国語で案内が表示され、慣れた言語で操作すると数十秒で現金・日本円が引き出せる、というサービスを導入しました。

2007年にサービス提供を開始した当初は、なかなか認知されず苦しんだのですが、その後外国人観光客が激増。昨年日本を訪れた外国人観光客は3,100万人でしたが、そのうち弊社ATMで現金を引き出した件数は、870万件。約3人に1人の方が、弊社ATMで現金を下ろして、買い物に使ってくれるようになりました。

 

外国人のニーズを追求し生まれた「海外送金アプリ」

「セブン銀行ATMによる日本円引き出し」の次に検討したサービスは、「モバイルバンキングやATMによる海外送金」でした。海外送金サービスを開発した背景には、日本に住む外国人の方への徹底した「不」に関するマーケティングがあったと言います。

彼らに日本の銀行の不便なところを聞きました。15時に窓口が閉店するので昼間働いている自分たちは利用できない。いつ着金するか分からない。送金手数料が5千円〜6千円程度と非常に高い、といった不満が出てきました。

なにより衝撃的だったのは、外国人である自分が銀行に行くと、言葉が通じないために対応されず逃げられる、という意見。これはとても屈辱的なことだと感じました。

これらの課題を解決するため、2011年より世界有数の送金サービス会社・Western Unionと提携し、セブン銀行ATMから世界200の国や地域へ送金し、約50万か所で現金で受け取れるサービスを始めました。

加えてセブン銀行は、海外送金手続きの際、不明な点を自国の言葉で相談できるよう、9カ国語でコールセンターを作り、言語ごとに専用ダイヤルを設定。合わせてセブン銀行ATMでも9カ国語で操作できるよう改良し、外国人が安心してATMを利用できる仕組みを構築しています。

また近年海外送金サービスは、セブン銀行のアプリからも行えるようになっています。

アプリの特徴は、(円ではなく)現地通貨表示、送金するタイミングの為替レート確認、扶養控除の提出に役立つ送金記録の表示ができること等。母国語で説明した操作方法の説明動画も好評です。

セブン銀行アプリの総ダウンロード数は、現在累計28万件以上。これは日本で働いている外国人の実に約5人に1人が利用している計算です。このアプリが普及した結果、外国人の口座数はセブン銀行全体の10%強に至るまでに。年間の送金件数も100万件を超え、外国人のお客様の利用が急増しているそうです。

日本で住む外国人をサポートするツールを提供

2011年にスタートした海外送金サービスですが、その発展のプロセスを作ったのが、2013年に担当になった大口氏です。その最初の仕事は、外国人社員の役割変更でした。

当時、「通訳担当」と呼ばれる5〜6人の外国人メンバーがいました。彼らに何のために日本で働いてるのか聞いたら、「母国のため」だと答えるんです。どういうことか詳しく聞くと、「同じ国の仲間が、正当で安価な送金方法で現地の家族に送金できるように、その仕組みを作るために働いている」と。さらには、「同じ国の仲間に日本を好きになってもらいたい。彼らが日本を好きになれば、一度帰国してもまた同じ国の仲間を呼んでくれます。結果的には必ず日本のためになるんです。」と語ります。

その志の高さに感動し、彼らを「外国人」や「通訳担当」ではなく「多言語メンバー」と呼んで、通訳以外の業務も積極的に任せるようにしました。

かくして外国人メンバーの役割が「通訳担当」から拡張したセブン銀行。多言語メンバーは日本人スタッフとタッグを組んで、外国人が住んでいる生活地域やコミュニティに訪問しました。銀行から通常の生活にいたるまで、すべての困りごとを聞くという活動を実施。ヒアリングは年間で数千件に及んだといいます。

セブン銀行のメンバーが直接外国人に調査したところ、日本に居住するに際して膨大な種類の困りごとが出てきました。

具体的には言語、住居、仕事、お金。この4項目に不安を抱えている外国人はとても多い。せっかく日本に来たのに、これらの不安が解消されないために、日本へのイメージが低下している可能性もありました。

外国人が多数の困りごとを抱えている。では政府による外国人のサポート体制はどうなっているか。例えば2019年4月に政府は「生活・就労ガイドブック」を発行。しかしこれは108ページという膨大な量で、しかも漢字だらけの日本語で書かれています。当然外国人は読めません。とてもじゃないですが外国人の立場に立った情報提供とは言えないでしょう。
(編注)政府も「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(第5回)」で「やさしい日本語」への変換を進めることを表明している。

だからこそ、民間企業にとってはビジネスチャンスなのです。生活全般のサポートや教育関連、行政手続きなど、外国人がサポートを必要としていることは非常に多い。すでに各企業がビジネスとしてサポートに乗り出しています。

実際にセブン銀行の多言語メンバーへの相談の声としても、「給与明細の見方がわからない」、「職場でいじめられている」といったさまざま問題が寄せられています。これらの問題解決には、行政、NPO等の支援団体、そして外国人を雇っている企業の連携が必要です。

そこで弊社は金融という枠を越えて、「コレクティブインパクト」というモデルを策定しました。行政、支援団体、外国人雇用企業、そして弊社の4者が協力して、「共生」というインパクトを創りましょう、と提案したのです。

具体的には、セブン銀行のアプリに「外国人居住者向けポータル」を構築。地公体やサポート企業からの情報を発信し、困りごとを解決する機能を付け加えました。

さらにセブン銀行は、Facebookでも5つの言語別ページを作成し、金融だけでなく日本に関するさまざまな情報を提供するように。現在同社はデジタル、電話、対面、SNSという4つの手段で、外国人をサポートできるような体制を構築するに至っています。

 

セブン銀行が目指すのは「日本人・外国人という言葉すらなくなる世界」

外国人従業員が多数働くセブン銀行ですが、社外や他部署の日本人スタッフからよく出る質問は、「多言語メンバーを登用する理由」だそうです。大口氏はこう語ります。

私が部署内の日本人スタッフに伝えてきたのは、外国人のお客様を一番よく知っている彼ら以上に業績を上げられるのか? 多言語メンバーとタッグを組んで仕事をする方が、会社の業績に貢献できるのではないかということです。

大口氏の考えに理解を示して協力した日本人スタッフは大きく成長し、今や他部署の部長まで昇格している方もいるそう。外国人など、誰とでも分け隔てなく協力して仕事ができる人は、どの部署にいっても評価される傾向にあるようです。

セブン銀行では今年、SDGs目標として「誰もが活躍できる社会づくり」と「多文化共生の実現」を正式に採用。大口氏が進めてきた外国人対応に合致する目標です。そのためこれからは、「外国人の不の解消」を部レベルではなく、会社全体で進めていきます。

最後に1点申し上げたい。

「外国人と仲良く」「多文化共生」などと言っているようでは、日本はダメだめになります。日本人、外国人、若者、高齢者など関係なく、努力して人間的に成長すること、会社として成長する仕組みを作ることが、日本を将来的に支え、企業の成長にもつながります。

「外国人と日本人が仲良く働く世の中へ」ではなく「外国人」「日本人」という言葉さえなくなった時に、本当の日本の発展があるのではないでしょうか。

金融という枠を越えて社内外で外国人の支援をするセブン銀行。しかしその最終目標は、日本人、外国人という枠すらなくすこと。とはいえ外国人が日本で感じる不はまだまだたくさん存在します。今後もセブン銀行は、これら不の解消に取り組んでいくはずです。

 

(執筆:金指歩、写真:taisho)

 

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