「外国人と共に歩む未来のビジネス」をテーマに開催されたGLOBALIZED 2019。
オープニングセッションを務めたのは、Wovn Technologies 株式会社 代表取締役社長の林です。テーマは「インターネットにおける枯れた技術の水平思考」。
また、この日発表したWovn Workboxもあわせて発表いたしました。本記事では林の講演を振り返ります。
信頼された技術を横展開する
「枯れた技術の水平思考」という言葉は元々、任天堂でゲームボーイを開発した横井軍平氏による言葉です。「枯れた技術」というのは古臭い技術という意味ではなく、長い年月使われているからこその、安定していて信頼性が高く、安価になった技術のこと。一方の「水平思考」というのは、今までと違う使い方によって、別の価値観を提供できるという考え方です。
つまり「枯れた技術の水平思考」とは、「ある分野で確立された、安価で信頼性が高い技術を、他の分野に展開すること」と言えます。
枯れた技術の水平思考から開発されたのは、例えば魚群探知機。これは「アクティブソナー」という、主に戦争中に使われていた音波で人の位置を特定する技術が素となっています。この技術を魚の発見に横展開したが魚群探知機、というわけです。
なぜ技術を横展開するのか。
そのヒントは「技術を作った人が、必ずしも最高の使い方を知っているわけではないから」であると林は述べます。例えば蓄音機。蓄音機といえば音楽を聞くために作ったのだろうと想像しますが、蓄音機を発明したエジソンは当初、蓄音機を「遺言の記録」のために作成したのだそうです。しかしながら実際には、蓄音機は音楽のために使われました。
このようにあらゆる技術は、当初とは異なる目的で利用される可能性を秘めているのです。
世界的サービスも、枯れた技術の横展開からできている
それでは、インターネットにおいて「枯れた技術の水平思考」が展開された例にはどのようなものがあるのでしょうか。
代表例はFacebookです。Facebookが開発された当時は、マイスペースなどのSNSが隆盛を極めていた時代。つまり、今やSNSの代名詞となっているFacebookでさえ、登場した当時には最先端の技術や概念ではなく、むしろ後発でさえあったのです。Facebookが成功した秘訣は革新性ではなく、「枯れた技術」であるSNSを、学生名簿という今まで注目されていなかった分野に適用したことでした。
Googleも同様です。よく知られるように、Googleは十数個目の検索エンジンとして産声をあげました。それを論文、あるいは広告という分野に適用させたことに革新性がありました。またAmazonは当初、ネット決済を卸売業に適用して急成長を遂げた企業でした。
Appleというと最新技術の結晶のように感じるかもしれませんが、開発者の間では新しい技術を使わずに、枯れた技術をうまく使うことで有名です。
このように、いまやGAFAと呼ばれるアメリカの雄も、枯れた技術の水平思考をうまく経営に取り入れているのです。そしてそれはWovn Technologiesも同様。Wovn Technologiesは「枯れた技術の水平思考」を念頭に、製品開発に取り組んでいます。
企業内データを多言語化するという課題
Wovn Technologiesは「世界中の人がすべてのデータに母国語でアクセスできるようにする」というミッションを掲げています。すべてのデータというところが特徴です。ウェブサイトやアプリケーションだけではなく、インターネット上にあるデータに、すべての人が自分の国の言葉でアクセスできるようにすることによってコミュニケーションをなめらかにし、人類の生産性を挙げたり、人類の知能を格段に向上させたいと思っています。(林)
多言語化を必要とする企業の視点からすると、データのやりとりには2つの種類があります。一方がコンシューマーとのデータで、他方が企業内のデータです。
前者のコンシューマーとのデータ、即ちWEBサイトやスマホなどのアプリに対してWovn Technologiesは、WOVN.io、あるいはWOVN.appを用いて多言語化し、課題の解決を図っています。しかし後者の「企業内のデータ」の多言語化については、手付かずにいました。
そもそも企業内ではどのようにデータ、あるいはコミュニケーションがとられているのでしょうか。多くの企業では、PowerPointや Word、Excel等で仕事をしていると思います。外国人の社員がいたり、海外企業との取引があったり、海外の子会社があったり、多言語化する必要があるケースでもそれは変わりません。
Wovn Technologiesは、そもそも多言語化のサービスを開発していたり、社員の国籍が18カ国だったりと、多国籍企業だと自負しています。そのためWovn Technologiesでは、雇用契約書やオリエンテーション資料など、ほとんどの内部資料を日本語・英語で作成。正直に言って、ものすごいコストがかかっています。全員が同じドキュメントを母国語で管理編集できるようになれば、どんなに楽だろうと感じてきました。つまり企業内データの多言語ニーズがあるのです。
先程の話を思い出してください。「枯れた技術」を特定のニーズにあてはめることによって、課題を解決していくのがWovn Technologiesという会社です。Wovn Technologies は今、クラウドストレージの技術に注目しています。Dropboxやbox、Googleドライブなどです。これらのサービスはもう何年も使われていて、安価で安定している、信頼できる技術です。つまり「枯れた技術」と言えるでしょう。(林)
外国人と共に働くための、クラウドストレージ
「クラウドストレージ」という枯れた技術を「社内ファイルの多言語化」というニーズに水平思考する。
この考え方をもとに、Wovn Technologies は新しいサービスを作りました。それがWOVN Workboxです。
WOVN Workboxは、保存するだけでファイルが多言語化される、魔法のようなクラウドストレージ。クラウドストレージに日本語のファイルをドラッグアンドドロップ。あとは待っているだけで英語に変換されたファイルができあがります。もちろん逆も可能です。(林)
対応するファイルは、WordやExcel、PowerPoint、テキストファイルで、言語は英語からです。追って中国語も対応する予定です。
まだ決まっていないことも多いのですが、2019年7月現在、クローズドβ版の利用者を募集しているところです。
ご興味のある方はぜひお問い合わせ下さい。
Wovn Technologies 株式会社はこれからも、外国人との新しい働き方を提案していきます。
応援のほどよろしくお願いいたします。
(執筆:jumpei notomi、写真:taisho)
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