2021年11月30日、製造業の海外営業部門で戦略立案をご担当されている方々や、営業活動やサービス活動の DX 推進をグローバルで展開されている方々に向けて、デジタルを活用した海外展開のあるべき姿についてセミナーを開催しました。
登壇したのは、製造業を中心とした IT アドバイザリーサービスの経験が豊富な WOVN Sales & Marketing Department / Account executive の黒澤です。コロナ禍において、一層加速する製造業の「モノからコトへ」のシフトに、海外展開を踏まえた情報発信体制のあるべき姿についてお話しましたので、セミナーの概要をレポートいたします。
■目次
- デジタルでの取組みをうまく海外展開できない実情
- 日本と海外 双方のニーズを実現し、海外展開を加速するための体制とは?
- 製品特性や商流に応じてコンテンツ運用を変えることも重要
- グローバル製造業の事例
デジタルでの取組みをうまく海外展開できない実情
コロナ禍以降、顧客接点が急速にデジタル化しています。BtoB であっても購買前に Web で情報収集することは当たり前になるなど、消費者行動にも変化が現れています。そのような中、製造業では本来の製造事業に加えて、デジタルマーケティング戦略の強化や、IoT サービスなど「モノからコト」へのシフトなど、ビジネスモデルを大きく転換する企業が一層多くなってきています。
しかし、デジタルマーケティングや IoT サービスなどは、日本国内でうまく展開できたとしても、それを海外に展開させるとなるとなかなか難しい、という実情があります。
例えばデジタルマーケティングの場合、海外現地の Web サイトは日本のものに比べて製品情報が少ない、経営からのメッセージも限定的、など情報発信が足りていないということもよくあります。そしてその結果、Web サイト経由で海外顧客との顧客接点を増やすことができていない、という課題を抱える企業も多いです。
その原因は2つ。
- 日本・海外での組織・役割の壁
例えば、Web サイトは一つしかなくても、関与する部門は日本・海外含めて多岐にわたるため、組織間連携が煩雑で難しく、誰が中心となって推進を担うのか曖昧になり、結局現地任せになってしまう。
- システム費・翻訳費のコストが膨大
求めるレベル合わせも難しく、すべての要望を受け入れるとシステム改修やローカライズ・翻訳のコストが膨大に。また、そもそも海外拠点側に予算・リソースがない、どこが費用負担をするのか決まらない、など。
Web サイトを海外展開する際には上記のような障壁もさることながら、そもそもこういった問題において、日本本社では「個別に現地ローカライズにあまり工数をかけずに、本社からガバナンスを効かせたい」、に対して、海外拠点側では「各国の商習慣・文化はそれぞれあるのだから、各国の意向に沿ったカスタマイズを入れたい」といった思いに対する方向性の違い、なども出てきます。
日本と海外 双方のニーズを実現し、海外展開を加速するための体制とは?
日本本社・海外拠点双方のニーズを満たし、デジタルマーケティングやデジタルサービスの海外展開における課題を解決するためには、システムによる最適化(共通化)部分と、本社の意向を組んだ上で各国で推進していく組織体制を考えることが必要です。
セミナーでは、企業のコーポレートサイトやグローバルサイトを例に、以下の2つのポイントをご紹介しています。
- ローカライズを考慮したシステム構築
グローバル共通で利用できるシステム基盤を日本本社で構築し、全社最適を意識したインフラを整備します。例えば企業のコーポレートサイトの場合、Web コンテンツ管理のためにグローバルで利用できる CMS を、また、各国でのローカライズのために WOVN のような多言語化ソリューションを導入します。
- 日本本社と海外拠点での役割分担ができる組織体制の構築
日本本社は、経営メッセージや製品に対する思いなど、本社で統制が必要な部分はグローバルで共通利用できるコンテンツを作成します。それを海外に展開することで、ガバナンスを維持しながら、海外拠点でも効率的にブランド統制がとれたコンテンツを発信できるようになります。一方海外拠点では、ローカライズを考慮したシステムを用いて、現地でしか販売していない製品や日本と売りポイントが異なる製品など独自展開したいコンテンツ制作や、現地の文化・商習慣に合わせたローカライズに注力することで、マーケティングを効率的に推進できるようになります。
これにより、本社によるガバナンスと海外現地によるローカライズ、双方を実現した情報発信の仕組みが構築できます。
製品特性や商流に応じてコンテンツ運用を変えることも重要
ここまで、ガバナンスとローカライズの両立についてご説明しましたが、ローカライズについては、自社の製品特性や商流に合わせて柔軟にコンテンツ運用を変えていくことも重要です。観点は2つ。
- 【作成コンテンツ】独自コンテンツか、グローバル共通コンテンツか
地域特性が大きい商材の場合は、各国で商習慣等に応じた独自コンテンツを作成する必要があります。また、グローバル共通商材・地域特性が小さい商材の場合は、グローバル共通コンテンツを利用した方が、ブランドガバナンス・効率性の観点でも良いでしょう。
- 【コンテンツ管理】現地法人が管理か、日本本社で管理すべきか
現地法人のリソースが活用可能であれば、現地法人管理にするのが良いでしょう。グローバル共通、といっても、やはり多少は現地の特性に応じてローカライズする部分もあり、現地法人であれば共通ルールを理解して使ってもらうことも可能です。一方で、代理店ビジネスの場合、特徴や企業の理念などを正しく伝えるためにも、日本本社で統制・管理をすることが望ましいです。各国ごとに独自コンテンツで運用するとしても、管理は日本本社で行う、そのための役割・体制・ルール作りが重要になります。
このようにまずは、グローバルで足並みを揃えなければいけない要素はなにか、各国らしさを出すべき要素は何かを把握することが大事です。さらに、日本にしかできないことは日本からサポートしつつ、現地コンテンツの運用については各国の意向に沿う形で任せられる部分を任せる、という体制が望ましいと言えます。各国としっかりコミュニケーションを図りながら、状況に合わせて運用を柔軟に変えていくことが重要です。
グローバル製造業の事例
本セミナーでは、大手グローバル企業での情報発信のローカライズ成功事例もご紹介しました。
【ヤンマー様の事例】
海外現地法人を抱えるヤンマーホールディングス株式会社様は、グローバル向け製品サイトのブランドガバナンス強化のため、グローバル CMS と WOVN を導入されました。これまでの運用では、コンテンツの軽微な修正であっても、
- コンテンツ修正⇒英語への翻訳(日本で実施)⇒各国で各国言語への人力翻訳(英語をもとに各国で実施)⇒公開
と一週間かかっていました。ですが、WOVN 導入により、
- コンテンツ修正⇒英語への翻訳(日本で実施)⇒機械翻訳で各国言語に翻訳し公開⇒気になる部分を各国で修正
と、機械翻訳後に各国でおかしなところがないかチェックするだけで作業を完了させることができるようになり、数日あればリリースできるようになりました。
【ローランド ディー.ジー.様の事例】
コンピューター周辺機器をグローバル展開されているローランド ディー.ジー.では、既に英語版の製品情報サイトをお持ちでしたが、東南アジア・中東・アフリカ地域への展開を見据えて8言語の追加を実施されました。現地語でのリアルタイムな情報発信を強化することにより、Web を活用した効率的な営業活動が可能になり、現地での機会損失を防ぐことができるようになりました。
この2社様の事例は、下記アーカイブ動画にてさらに詳しくご紹介しています。運用フローや役割分担の工夫など、詳細は動画で是非ご覧ください。
何が最適なのか、いつ・何から始めていくべきなのかは、会社によって要件が様々です。WOVN では多言語化のプロフェッショナルを豊富に抱えています。よくある課題・組織に応じた対応策の提示なども、お客様に寄り添う形で企業様のデジタル施策の海外推進を提案・支援させていただきます。
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