近年、中国国内で越境ecを利用した商品の購入が増加しています。越境ecとは、日本語では「国境を越えた電子商取引」と訳されますが、要はインターネットショッピングを利用して海外の店舗から商品を購入することです。事業者からみると言語の問題はありますが、海外の経済発展を遂げている国、とりわけ人口の多い中国の市場に対して実店舗を構えることなく、低コストで商品を販売することができるというメリットがあります。
では、どの程度中国には市場があるのか、また、この越境ecに対して中国国内の制度はどう対応しているのかみていきましょう。
中国の越境ecの市場規模は
中国国内で越境ecを利用した取引の現状はどのようになっているのでしょうか。
経済産業省がまとめた資料によると、中国が日本及びアメリカから越境ecを利用して商品を購入した金額は、平成26年は1.2兆円(前年対比53.0%増)、平成27年には1.6兆円(前年対比32.7%増)と急速に拡大しています。また、平成31年までの予測によると、中国の市場は約2.9倍まで成長する可能性があることが予測されているのです。
これに対して、日本国内で越境ecを利用して商品を購入している金額は、平成26年が2000億円(前年対比8.9%増)、平成27年は2200億円(前年対比6.9%増)となっています。日本の場合も平成31年までに約1.5倍まで市場は成長すると予測されていますが、その規模は約3300億円に過ぎません。
中国が1.6兆円の約2.9倍、つまり4兆6400億円程度まで成長することと比べると、規模の違いがよく分かるのではないでしょうか。
【参照URL】http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150529001/20150529001-1.pdf http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160614001/20160614001.pdf
中国で越境ecが人気の理由とは
では、なぜこれほどまでに中国で越境ecを利用した取引が過熱しているのでしょうか。
理由の一つに中国の経済は多少勢いが衰えてきていますが、未だに発展を遂げていることが挙げられます。中国国内でインターネットを利用している人は約半数だといわれていますが、今後はますます利用者は増えると予想されています。インターネットの利用者が増えるということは、越境ecを利用する対象者が増えるということで、必然的に市場規模も増加するのです。
ただし、これはあくまで利用者数の増加による市場規模の拡大であって、人気の理由はまた別にあります。
それは日本製品に対する信頼です。一時期と比べると勢いは弱まりましたが、中国人観光客による「爆買い」が象徴するように日本の製品は信頼感が高く、中国や東南アジアなどで人気があります。これまでは、日本国内へ旅行に行くことでしか手に入れられなかった製品が、越境ecを利用することで、より手軽に購入することができるようになったのです。
中国の新越境ec制度とは
このように、越境ecを利用したサービスを開始することは事業者にとって非常に魅力的なものですが、気を付けなければならない点もあります。
それは、中国国内における制度です。越境ecが急速に拡大することによって、一部の消費者による課税逃れや代理購入といった、本来の消費者とは異なる目的を持って利用する人も増えてきました。そのような事態を受けて中国政府が2016年4月に新制度を施行しています。ただし、この制度は現場の混乱を招いたために2018年度から本格的にスタートするように延期されました。
この制度は大きく分けて、注文だけ日本国内の店舗で受付をするが、実際の商品は現地の保税倉庫から発送する「保税区モデル」と、受付も発送も日本から中国に対して行う「直送モデル」の2つに分けることができます。 内容に関しては非常に細かいのでここでは詳しく述べませんが、「輸入許可書が必要になること」、「消費者側の購入金額に上限が定められていることにより、商品の返品などのトラブルが起こる可能性があること」と言った問題が起こる可能性がありますので、よく理解した上で検討するようにしましょう。
【参照URL】https://netshop.impress.co.jp/node/3735
今後予想される中国の越境ecの流れ
この新制度は厳しい制度だと思う人もいるかもしれませんが、基本的には越境ecを利用した不正行為をする人を取り締まる為の制度ですので、越境ecそのものに対して規制をするわけではありません。
ただし、中国政府が課税逃れを目的とする消費者や、代理購入をする業者を摘発したいということは間違いありませんし、国際スピード郵便(EMS)が2016年6月1日から料金が値上げされたこともあって、直送方式での越境ecはこれまでと比べると多少利用しにくくなる可能性はあります。
しかし、直送方式には事業者にとって現地で保管する倉庫などを作らなくて良いといったメリットもありますので、直送方式が今後急速に衰えるかというとそうとも限りません。そのため、今後もしばらくは直送方式と保税区方式の両方で運用されていくと予想されます。
いずれにしても、越境ecそのものが今後急速に衰退することは考えにくい状況となっています。その国の実情にあった取引方法を展開していくことがベストなのではないでしょうか。
【参照URL】http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2016/00_honsha/0129_03_01.pdf
まとめ
日本国内は少子高齢化が進んでおり、市場規模は今後も縮小傾向にあるといわれています。そのような時こそ、経済発展を遂げており、人口の増加している国々に目を向けてみてはいかがでしょうか。
その中でも、中国は世界最大の人口を抱えており、ビジネスという面では非常に魅力のある国の一つです。制度面では難しい問題に直面することもありますが、それ以上にメリットも多いですから、チャレンジしてみる価値がある国といえるでしょう。