越境ecで食品関連は輸入・輸出できるの?


越境ecによって取り扱う商品として、需要の多い商品ジャンルの一つが食品です。特に中国人による食品の注文が多く、日本を観光した中国人が日本で気に入った商品を本国に戻ってから再び注文する、といったケースが増えているようです。中国との越境ecは拡大の一途をたどっているのですが、2016年5月に突然、中国政府によって通関手続きの変更があったことで、現場の取引にも大きな影響が出ています。

今回は主に中国との取引の多い食品を取り扱う越境ecについて、その基本的な情報についてお伝えしたいと思います。

 

海外への食品関連の配送方法とは

越境ecによる取引によって、食品を海外へ輸出する際の配送方法には主に3つの方法があります。

まず1つ目は事業者自ら注文者の元へ直接配送する方法。日本郵政の提供するEMSなどを利用し、関税手続きや許認可に関する提出書類などを全て自分達で用意することで、直接注文者の元へ届ける配送方法です。この方法には大きな初期投資を必要としないというメリットがありますが、通関に関する手続きを行って関税額が決定次第、輸入者の方で税金を支払う手続きをしてもらう必要があります。
また食品の輸出の際は基本的に輸出先の国の認可が必要となり、その国で輸入の制限されている商品については、原材料や放射線に関する情報などの必要情報を所定の書類に記入して現地の指定機関に提出しなければなりません。一部の化粧品などの検査では認可までに数か月を要する事例もあり、一般的な食品でも認可を得るまでには2週間ほどの期間が必要です。したがってこの配送方法では、あらかじめ商品の流通スキームをしっかり組み立ててからでないと、スムーズに事が運ばなくなってしまいます

2つ目の配送方法は、転送事業者などを利用する方法。国内の流通拠点などに商品を送り、そこから現地の注文者への配送手続きを転送事業者に代行してもらう方法です。この方法では国内での販売・流通スキームを援用できるので、新たな海外のお客様向けの流通スキームなどの構築の手間なく、比較的簡単に越境ecに取り組むことができます。複雑な手続きを輸送事業者に任せることができるので、多くの事業者が利用している方法です。

最後に3つ目の方法は輸出先の現地に倉庫などを設置し、注文の際には現地倉庫へ配送する方法。この配送方法は、注文者にとっては現地のec事業者を利用するのと同じ感覚で利用できるため注文しやすく、事業者としては結果的に大きな利益を見込むことができる方法です。ただし現地の倉庫を借りるための初期投資費用がかかる、在庫リスクが発生する、固定費用もかかるといった経済的なデメリットがあります。したがってこの方法は、こうした問題点を解決できる十分な資金力を持った大手の事業者向けの配送方法と言えるでしょう。

 

中国向け越境ecの通関手続きの変更点とは

さて中国での越境ecでは、2013年にスタートした越境ec試験区(保税区)と呼ばれるエリア(上海、重慶、杭州、寧波、鄭州)を利用した取引上の優遇措置を、日本の各事業者は活用してきました。この保税区内に在庫を置いた場合には簡易な通関手続きで個別に配送ができ、また税制上の優遇も受けられるため、コストや配送のスピードの速さという点で圧倒的なメリットがありました。

ところが2016年5月に中国政府は保税区での越境ecに関する新制度を発表し、税制は優遇措置から一般貿易と同じ税制の適用(輸入増値税の適用)に移行、さらに「入境貨物通関単」と呼ばれる通関証明書を要するという大きな変更点が定められたことが明らかになりました。
しかも健康食品、粉ミルク、化粧品などの一定の商品に対しては、審査に時間のかかる「輸入許可証」の提出が求められることとなり、新制度発表後、中国の現地ではこれまでのように保税区で商品を取り扱うことが難しいという予測が広がっていたのです。
税制の適用改正だけでなく通関審査を必要とすることになったことは予想外の波紋を呼び、また当局側の新基準にもあいまいな点が多かったため、現場の事業者や消費者の間では大混乱が生じました。

このため、中国当局は2018年末までは猶予期間を置くことにし、通関に関しては以前の基準を一定期間継続するという決定がなされました。ただし猶予期間終了後は新税制の適用が始まるため、各事業者はその対策に乗り出す必要に迫られているのです。

今後予想される中国の越境ecのジャンル別流れ

なぜこのような新制度が導入されるのかというと、個人が輸入を代行する行為や、直接輸入による課税逃れが中国では横行しているという実態があるからです。日本でも話題になった中国人観光客による「爆買い」の中には、個人で輸入を代行して代理購入することで、大量の商品を税制や通関手続き上お土産と同じ扱いになるようにして仕入れている人もいたわけです。
こうした代理購入行為が主な規制の対象となっているため、現地のモールなどを通じて正規に商品販売を行っている事業者に対しては、税制上の優遇措置が継続されるというのが大方の予想です。

ただし粉ミルク、化粧品、健康食品に対する通関規制は強化される流れであることが予想されています。
これらの商品は非常にニーズの多い商品であるため、主力の取り扱い商品としている事業者も多く存在しています。そのため規制の動向に注意しつつ、他の売れ線商品である雑貨やベビー用品などへと取り扱い品を拡大していくことも必要となってきます。
なお食品の輸出に関しては全体的に規制が強化される流れです。中国との越境ecの商圏規模自体は拡大傾向にあることは間違いないので、制度の変更点に対して機敏に動けるように準備をしておきましょう。

 

まとめ

中国との取引量の多い食品を扱った越境ecでは、直接発送、輸送代行業者の利用、現地の倉庫への発送といった配送方法があります。食品の輸出入では、相手国の認可手続きや関税手続きなどの複雑な手続きが多く、大多数の事業者は転送業者による配送方法を選択しています。

中国との越境ecでは、これまで保税区での優遇措置を利用して多くの事業者が進出していましたが、2016年に中国当局が保税区での取引に関する新制度移行を発表。まだまだ不明な点が多かったために本格的な制度移行は1年先送りされましたが、今後は食品関係の取引などでは規制が強化されることが予想されます。中国での越境ecの規模自体は拡大傾向にありますから、新制度の動向を注視しつつ、柔軟な対応が各事業者に求められています。


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