中国市場#2――収入と家賃の格差


 こんにちは。上海出身のWovn社員の韓です。前回は「世界第2位の経済大国」中国市場の将来性及び中国語の重要性について概要レベルでご紹介しましたが、少しでも中国市場に興味をお持ちいただけたでしょうか(過去記事:中国市場#1――中国市場の将来性、世界言語「中国語」)。今回は中国市場について、賃金・不動産・ナンバープレートの観点から事例を用いてご説明します。

 

賃金

 2018年時点での中国の総人口は約13.95億人、国内総生産(GDP)は約136,082億ドル、一人当たり国民総所得(GNI)は約9,470ドルです。

 一方で、当時の日本の総人口は約1.3億人、国内総生産(GDP)は約49,709億ドル、一人当たり国民総所得(GNI)は約41,340ドルです。

 上記のデータは平均値のため、中国の各地域ごとの格差がはっきり見分けられるわけではありません。今回、まずは最低時給から分析していきたいと思います。

 最低時給20元(約320円)を超える地域は4カ所のみで、最も高いのは北京(約375円)、2位以下は上海(約345円)、天津(約325円)、広東省の深圳(約318円)の順となります。一方で、日本厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」(2019年度)によると、東京都が一番高く1,013円、一番低い地域の最低時給は790円となっております。すなわち、日本における最低時給が一番低い地域でも北京の約2倍となります。

中国全国各地最低時給一覧(2019年6月まで)

地名

発効年月日

最低時給額(単位:元)

第一段

第二段

第三段

第四段

第五段

北京市

2018.09.01

24

 

 

 

 

天津市

2017.07.01

20.8

 

 

 

 

河北省

2016.07.01

17

16

15

14

 

山西省

2017.10.01

18.5

17.4

16.3

15.2

 

内モンゴル

自治区

2017.08.01

18.6

17.6

16.5

15.5

 

遼寧省

2018.01.01

16

14

11.8

10.6

 

吉林省

2017.10.01

17

16

15

14

 

黒龍江省

2017.10.01

16

13

12

 

 

上海市

2019.04.01

22

 

 

 

 

江蘇省

2018.08.01

18.5

16.5

14.5

 

 

浙江省

2017.12.01

18.4

16.5

15

13.6

 

安徽省

2018.11.01

18

16

15

14

 

福建省

2017.08.01

18

17.5

16

14.6

13.6

江西省

2018.01.01

16.8

15.8

14.7

 

 

山東省

2018.06.01

19.1

17.3

15.5

 

 

河南省

2018.10.01

19

17

15

 

 

湖北省

2017.11.01

18

16

14.5

13

 

湖南省

2017.07.01

15

13.4

12.4

11.6

 

広東省

2018.07.01

20.3

16.4

15.3

14

 

広西省

2018.02.01

16

14

12.5

 

 

海南省

2018.12.01

15.3

14.4

14

 

 

重慶市

2019.01.01

18

17

 

 

 

四川省

2018.07.01

18.7

17.4

16.3

 

 

貴州省

2017.07.01

18

17

16

 

 

雲南省

2018.05.01

15

14

13

 

 

チベット

自治区

2017.06.01

16

 

 

 

 

陝西省

2019.05.01

18

17

16

 

 

甘粛省

2017.06.01

17

16.5

15.9

15.4

 

青海省

2017.05.01

15.2

 

 

 

 

寧夏回族

自治区

2017.10.01

15.5

14.5

13.5

 

 

新疆ウイグル

自治区

2018.01.01

18.2

16.2

15.4

14.6

 

 ここで、中国で最も時給が高い北京の375円と、日本で最も時給が高い東京の1,013円を比較し、1時間の時給でどんなことができるのかをご紹介させていただきます。

 一つ目の比較対象は交通機関初乗り運賃です。北京の地下鉄は3元(約50円)から、東京メトロは170円からとなります。すなわち、北京で1時間の賃金は地下鉄に8回乗れますが、東京では5回です。

 二つ目は白菜です。2019年12月20日時点、北京での平均価格はkgおよそ0.53元(約8円)で、1株kgは1元(約16円)です。一方で、日本の白菜1/4カットは104円、1株は412円で、北京における価格の約26倍にもなります。日本の野菜と果物は確かに高いイメージがありますが、約26倍の差はかなり顕著でしょう。

 三つ目はiPhone 11 Pro 64GB(117,480円)です。iPhone一台を購入する場合、北京では313時間の労働時間に相当しますが、東京では116時間となります。

 ちなみに中国電信の携帯料金について、毎月5GBのプランは30元(約500円)で、NTTドコモのプランでは4,980円となり、日本の料金は中国の10倍となっています。

 北京の最低時給は東京の37%に相当するのみで、近年政府も賃金の上昇を実施していますが、日本との賃金格差はまだまだ著しいでしょう。

 「本当ですか」という疑問をもっている方もおられると思いますが、最低時給だけではなく、月給、家賃の面からも見てみたいと思います。

 最低時給で毎月の労働時間を180時間として、北京の場合は4,320元(67,500円)、東京では182,340円となります。北京VS東京の労働者の一般的な家計簿を比較した下記の表をご覧いただければより中国人の生活状況がわかります。(苹果園~王府井と八王子~新宿の距離は比較的同じです。)

 

北京

東京

お住まい~勤務地

苹果園~王府井

八王子~新宿

給料

67,500円

182,340円

家賃1LDK

47,000円

50,000円

光熱費

3,000円

13,000円

通信費

1,000円

5,000円

交通費

2,300円

14,490円

食費

14,000円

30,000円

支出合計

67,100円

112,490円

貯金額

200円

69,850円

 

 毎月の貯金額200円!老後どうやって過ごしていけるの?!実は、北京だけではなく、上海や深圳などの一級都市では、サービス業の会社は出稼ぎ労働者を雇用する際に住み込みの寮や賄いも提供しています。労働者にとって大きな負担を削減してあげ、その分は貯金や仕送りなどができます。

 また、一級都市出身の方は、結婚する前はほとんど一人暮らしをしません。実家暮らしで家賃を払わなくてよく、また光熱費も分担できるとなると、毎月この給料でもなんとか生活はしていけるでしょう。

 

❷不動産

 近年、中国では不動産バブルが起き、北京や上海などの都市部では不動産価格が高騰しています。2019年4月13日、中国メディアの観察者網は「世界で住宅価格が高い上位10都市のうち4都市を中国が占めた」と報じました。記事は、不動産サービス企業CBREが世界35都市の不動産市場を分析した2019年版のレポートを発表したことを紹介し、「香港が『世界で住宅価格が最も高い都市』のタイトルを保持したほか、上海、深圳、北京がそれぞれ3位、5位、9位に入った」と伝えました。

 レポートによると、2019年の香港の住宅の平均価格は約1億3,838万円、2~10位はシンガポール約9,600万円、上海約9,500万円、バンクーバー約8,900万円、深圳約7,440万円、ロサンゼルス約7,430万円、ニューヨーク約7,380万円、ロンドン約7,075万円、北京約6,880万円、パリ約6,840万円の順となります。

 上海の住宅の平均価格は約9,500万円、最低時給は約345円、2018年度における平均月給は約8,765元(約13万7,000円)、平均年収は10万5,176元(約164万円)、ですが、なぜ住宅の平均価格は世界2位となったのか。サラリーマンが一人で上海のマンションを買うには、58年分の給料が必要となります。

 不動産価格が高騰となる背景は、中国では1998年に住宅配給制が廃止され、同年に商品住宅(分譲住宅)の供給がスタートしました。その後は旺盛な需要に牽引され、開発投資額・新規着工面積ともに急速に拡大しています。2010年以降、政府は各種規制の緩和・引き締めを通じて住宅需給のコントロールを強めており、これに伴い中国の不動産価格は変動しています。一方で、住宅に対する需要が強い一級都市、及び一部の二級都市では、2015年後半から2016年年初にかけて販売価格が大きく高騰しました。2016年9月以降は、追加の規制強化策導⼊により、価格上昇の沈静化が一部に見受けられますが、依然として高水準にあります。

 2019年9月時点における、上海中古マンションの平均価格相場は48,573元/㎡(約76万円)です。同年11月時点での、新築マンションの平均価格相場は53,064元/㎡(約83万円)です。例えば、宝山区の70㎡新築マンションは約5,810万円、地下鉄場中路駅から徒歩30分、人民広場駅まで40分かかります。また、中国ではマンション購入の頭金は30%が必要、すなわち約1,750万円を事前に用意しないといけません。「所有権」を持たず、70年間の「使用権」だけとなっています。

 また、中古住宅の平均平米単価も高騰しています。地下鉄2号線と7号線が交差する「静安寺駅」を北上した場所に「海防村」という築22年の集合住宅は、2019年12月時点で平均平米単価が13万4,559元(約210万円)です。

 静安区の最新・最高級と言われる中古マンションの約1.8倍にもかかわらず、2018年5月に4階南向き47.9平米の中古住宅がなんと700万元(約1億2,000万円)で成約しました。

 なぜ、築20年の住宅がこんなに高値で取引されるのでしょうか。

「中国で教育改革が進むと不動産バブルが終わるワケ」の記事によると、「海防村の近くに『上海市静安区 教育学院附属学校』という公立の有名な重点学校(中国政府が特に教育に力を入れている進学校)があります。海防村に住んでいると、この学校に入学できるため、誰もが海防村の住宅を欲しがっているのです。私の家の近所に住んでいた人も、子どもが生まれるとすぐに海防村の住宅を購入しました。」と、上海出身の男性が説明していました。

 学区問題は日本でも起きていますが、必ず住宅を購入してから進学するというルールはありません。また、新宿駅から通勤40分、八王子駅から徒歩30分の新築マンションの価格は約3000万円です。所有権あり、頭金ゼロで購入できる日本の不動産市場は大きな魅力を持っています。

 

ナンバープレート

 もう一つ日本と大きな差があるのは、ナンバープレートです。クルマが増えすぎて大気汚染や渋滞も深刻になっているのが理由で、中国政府は新しいナンバープレートの発行に制限をかけました。制限の方法は、都市ごとに異なります。たとえば北京は抽選制度。どんなにお金持ちでも、抽選で当たらないとクルマは買えません。ちなみにその当選率は1~2%と言われています。一方、上海や深圳では競売制度で、ナンバープレートが欲しければ、お金を積み上げなければなりません。2019年7月時点、上海ナンバープレート落札平均額は90,119万元(約140万円)です。コンパクトカーなら、車両価格よりもナンバー代の方が高くなりかねません。

 一体、上海ナンバープレートはなぜそこまで高くなったでしょうか。メリットは何でしょうか。実は上海では車両の増加が著しく、道路や駐車場の整備が追いつかない状況となっています。慢性的な交通渋滞をこれ以上悪化させないために、上海市政府は新車台数を制限し、新車を購入しようと思ったら、競売を通じてナンバープレートを取得しなければならない仕組みを作りました。そのため、平日の7:30~9:30と16:30~18:30の時間帯においては、上海以外のナンバープレートの車を内環高架・中環高架・南北高架・延安路高架などの市内高速道路や、黄浦江(上海市を流れる川)にかかる橋、トンネルへ進入することを禁止しています。

 ナンバープレートでも住宅でも、出稼ぎ労働者や普通のサラリーマンにとっては遠い夢のように思われます。それでも、中国人はみな一生懸命働いて、家族のために住宅ローンを背負って生きています。

 

❹まとめ

 バブル経済の影響や政府の調節・統制により住宅価格の高騰や低い最低時給による格差を生み出す一方で、マイホームとマイカーがないと結婚できないという一般的な認識により、男性はマイホームを購入して初めて「結婚準備ができた」という心理になることも住宅価格を押し上げる潜在的な理由だと思われます。中国人は特有な文化や考え方があるからこそ、自分や家族へのプレッシャーはなかなか消せないでしょう。

 いかがでしたでしょうか。次回は新型コロナウイルスの影響で、中国のビジネスモデルの変革について詳しく説明していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(文・韓)

 

参考資料:

北京地下鉄:https://map.bjsubway.com/
北京新発地市場:http://www.xinfadi.com.cn/marketanalysis/1/list/1.shtml
おねだんノート:https://onedannote.com/10/
iPhone 11 Pro:https://www.apple.com/jp/shop/buy-iphone/iphone-11-pro
Exciteニュース:https://www.excite.co.jp/news/article/Recordchina_20190415007/
2018年度上海平均年収:https://new.qq.com/rain/a/20190623A0GSFL
SUUMO:https://suumo.jp/ms/shinchiku/tokyo/sc_hachioji/nc_67719023/?rnms=404
JBpress 中国で教育改革が進むと不動産バブルが終わるワケ:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57203
中国不動産サイト「鏈家」:https://sh.lianjia.com/ershoufang/107101951812.html
Sina上海私用車ナンバープレートガイドブック:http://sh.auto.sina.com.cn/z/shchepai/
中国人ドライバーを悩ませるナンバープレート制度とは?:https://gazoo.com/article/daily/180514.html
中華人民共和国人力資源と社会保障部:http://www.mohrss.gov.cn/SYrlzyhshbzb/gongzishourufenpei/fwyd/201907/t20190724_326335.html
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
中国住宅不動産市場の動向:https://www.smbc.co.jp/hojin/international/global_information/resources/pdf/smbccnrep_02_008.pdf

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