中国市場#1――中国市場の将来性、世界言語「中国語」


 

 こんにちは。初めまして。中国出身のカンと申します。日本に来て9年目に入り、いまはウェブサイト翻訳の仕事をしています。鉄道・メーカー・エンターテインメントなど様々な分野に携わり、各ページを日本語から中国語に翻訳・校閲し、インターネット空間をローカライズする「黒子」として「日本のモノ・コト」を発信しています。

 中国と離れて生活していますが、毎回帰国の際に面白い変化を感じます。例えば、多くの飲食店のメニューは紙ではなく、Wechatでお店の公式アカウントをフォローしてから注文すること。領収書もQRコードで発行すること。その発見や中国の歩みを皆様にも共有したくて、ミニレポートを書き始めした。

 まず今回は、「世界第2位の経済大国」中国市場の将来性及び中国語の重要性について、概要レベルでご紹介します。

  1. 中国と中国語の概要

     中国の陸地面積は約960万平方kmで、ロシアとカナダに次いで世界で3番目の大きな国です。2018年時点、中国の総人口は約13.95億人、国内総生産(GDP)は約136,082億ドル、一人当たり国民総所得(GNI)は約9,470ドルです。一方で、日本の総人口は約1.3億人、国内総生産(GDP)は約49,709億ドル、一人当たり国民総所得(GNI)は約41,340ドルです。

     また、中国語は中国本土以外でも、台湾、シンガポールやマレーシアなどの東南アジア諸国で使われています。そのうち日常生活の中で中国語を話している人は、香港約668万人、台湾約2,240万人、シンガポール約417万人、マレーシア約736万人と言われています。さらに、世界の華僑人口も4,749万人おり、総計約14.8億人が中国語を使用しています。つまり、全世界で5人に1人が中国語を話しています。国連でも公用語の一つとして採用された「中国語」はまさに「世界言語」だと言えるでしょう。


    参考資料:
    中国国家統計局

    http://www.stats.gov.cn/tjsj/zxfb/201902/t20190228_1651265.html
    日本外務省

    https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ecodata/index.html
    壹海外華人人口分布 – 中華民國僑務委員會


  2. 中国経済の成長と将来性

     中国が1978年に改革開放政策を導入してから、目覚ましいスピードで経済成長を遂げ、2010年には名目GDPで日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となりました。先進国・地域の成長率が低下する中、世界経済の成長を牽引する中国の1人当たりGDPはまだ低い水準ですが、その成長率は高く、「世界の市場」として注目されています。

     特に一級都市(一線都市)である北京市、上海市、広州市、天津市、深セン市は生産、サービス、金融、流通などの全国的な社会活動の中で、牽引役を担いながら波及効果をもつなどの主導的役割を果たしています。

     ※一級都市とは、全国的な政治・経済活動などの社会活動で重要な地位にあり、指導的役割を備え、波及力・牽引力をもった大都市を指します。その地位や能力は主に都市の発展水準、総合的な経済的実力、波及力・牽引力、人材吸引力、情報交流の力、国際競争力、科学技術・イノベーション力、交通の発達といった各方面に体現されます。



     上記の図から、2017年時点で1人当たりGDPが1万ドルを超える地区はほとんど沿岸部都市だと分かります。日本経済研究センターは、日本及びアメリカを含むアジアの13カ国・地域の主要77都市を対象に都市別の域内総生産(GRP)の予測をまとめ、2030年GRP上位10都市の順位はニューヨーク1位、東京2位、ロサンゼルス3位、シカゴ4位、北京5位、上海6位、サンフランシスコ7位、ダラス8位、深セン9位、重慶10位と発表しました。中国は4都市が浮上し、今後、躍進することがますます鮮明となるでしょう。

     一方で、経済発展が遅れていた内陸部の発展が進み、沿岸部との格差の縮小が進んでもいます。重慶、成都、武漢、長沙、昆明といった西南部都市の勢いが加速し、より一層の発展を期待しています。

     特に内陸部唯一の直轄市である重慶は、2002年度~2016年度のGDP成長率は10%以上を維持しており、2018年度に6.0%まで減りはしましたが、重慶市統計局は「重慶市経済は概して良好だ」と強調しました。自動車製造を中心に成長スピードの鈍化が顕著な一方、戦略新興産業は相対的に高い成長を遂げており、「『高成長』から『質の高い成長』への移行が着実に進展している」と主張しました。電子情報産業、自動車、機械設備などが集積するだけではなく、欧州に向けた国際貨物鉄道の主要な発着点・物流ハブとしての存在感を競い合い、デジタル経済の発展にも力を入れています。今後、重慶は西部地域の基点として対外貿易の多様化と拡大が期待されるとともに、「一帯一路」の重要戦略拠点としてより積極的な経済発展を推進していくことが予想されます。

    参考資料:
    中国国家統計局―中国統計年鑑
    http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2018/indexch.html
    人民網経済用語集
    http://j.people.com.cn/94476/100561/100569/7899843.html
    日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38568970V01C18A2FF1000/
    日本貿易振込興機構(ジェトロ)https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/2452acc09a5da036.html
    https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/08/2c17feceb29dbeff.html
    https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/08/890b02484df20407.html

  3. 中国人の消費能力

     中国では、ネットショッピングが主流となり、ショッピングモールはもはや「飾り物」となってしまいました。特に、中国アリババ集団が11月11日に行った中国最大のセール「W11(ダブルイレブン)」1日の取引額は2,684億元(約4.2兆円)で過去最高となり、2018年の2,135億元(約3.3兆円)より約26%増えました。一方で、2018年同日の物流量は10億4,200万件に達して過去最高を更新し、「1日で荷物10億個」の新時代に突入しました。インターネットの便利さと物流の効率化によって、中国人の生活に大きな変化を与えています。


     一方で、アマゾン日本事業の2018年(2018年1月~12月)売上高は約1兆5,350億円、楽天オンラインショッピング売上高は約1兆1,014億円でした。2社の年間売上高を合わせても、「天猫」の単日取引額に達しません。では、他の調査結果はどうなっているでしょうか。下記の数字を見ていただくと、一目瞭然となります。

     シンガポール開発銀行(DBS銀行)が2019年2月に発表した報告の中では、2018年中国の小売消費総額は625兆円に上り、中国国内総生産(GDP)の45%に相当する規模になりました。2022年に中国のオンラインショッピング利用者は9億3,200万人に増加すると予測し、今後中国人の消費モードはより一層大きな変化を起こることが予想されます。

     さらに、経済産業省が実施した「電子商取引に関する市場調査」によると、2018年において、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも増加しました。特に、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆5,345億円(前年比18.2%増)、米国事業者からの越境EC購入額は1兆7,278億円(前年比18.5%増)であり、中国消費者による越境EC購入額の拡大が目立っています。

     また、世界と比較すると、中国の消費情勢指数は2015年以降に世界平均を上回る水準が続いています。調査会社ニールセンN.V.のデータによると、2018年上半期の中国消費情勢指数は114pで、引き続き世界平均の105pをはるかに上回りました。

     ニールセン中国エリアの趙社長は、「中国の現在の消費高度化は単に製品の品質への要求が高度になっただけでなく、より意味消費観の高度化だ。消費高度化の大きな流れの中、消費者の消費心理がより成熟し、実質的になり、消費の選択はより理性的になり、単にメンツのためや大手ブランドだからといった理由で買い物をすることはもはや望んでおらず、新しい消費文化が形作られつつある」と指摘しました。

     中国市場の膨大な潜在力を改めて認識ができ、消費観の変化が消費の高度化の中で巨大な潜在力を育成していくうえで、企業・投資家にとっても絶好調な進出機会だと考えられます。しかし、海外事業を展開していくのは様々な情報の収集や現地調査が必要です。そのため、事前にメリットとデメリットなども把握していきましょう。

    参考資料:
    日経ビジネス
    https://business.nikkei.com/atcl/global/19/shanghai/111200550/
    人民網
    http://j.people.com.cn/n3/2018/1112/c94476-9517424.html
    https://netshop.impress.co.jp/node/6235
    http://j.people.com.cn/n3/2018/1130/c94476-9523659.html
    http://j.people.com.cn/n3/2019/0214/c94476-9546250.html
    経済産業省
    https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002.html

  4. 日本企業の海外事業展開

     日本貿易振興機構(ジェトロ)が2018年に実施した「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」では、「海外進出の拡大を図る」と積極姿勢を示した企業は57.1%と前年と同水準となりました。世界的な景気減速、貿易摩擦やブレグジット(英国のEU離脱)などの影響が懸念されるところ、下記のポイントも海外事業を展開しようと考えている企業にとって「安定剤」になるでしょう。

    ・輸出、海外進出の拡大意欲はほぼ横ばいに推移、拡大先に中国を選ぶ企業の比率が上昇

    ・24%の企業が今後、保護貿易主義による負の影響を予想、その7割は対応策を検討

    ・海外向け販売のEC利用が拡大、約6割の企業は利益・メリットを実感

     海外ビジネスをめぐる環境は不透明さが増している中で、「国内での需要の減少」が続いているため、海外市場の規模と成長性はやはり魅力が高いとみられます。中国進出のメリット・デメリットの例を挙げる中で、中国展開を図る企業の意図を読み解いてみましょう。

    参考資料:
    日本貿易振込興機構(ジェトロ)https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0401/a8e5c0f709227d49.html
    https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/a27d83f6e1cd38e6/20180055.pdf

  5. 中国進出のメリット・デメリット

    メリット1   高い成長率を誇る世界マーケット
     
     中国市場は国民の生活水準・生活環境の向上に伴い、年収が1,000万円を越える世帯が2億人を越えるなど、「中流層」と呼ばれる人々の数が急増しているそうです。世界一の規模で急速な成長を続ける中国には、マーケットとして多くのビジネスチャンスを見出すことが可能となります。

    メリット2 豊富、比較的安価な労働力

     労働賃金の安さは昔と比べたら、そのメリットは以前よりは少し弱まっていますが、北京や上海などの一部一級都市を除く、人件費・物価(現地滞在費)・オフィス代などの水準は日本の数分の一程度です。製造業やIT系の企業の方々など、原価をさらに抑えたい場合には大きな魅力を感じるでしょう。

    メリット3 外資誘致の優遇政策

     中国国家発展改革委員会は外資誘致の5大措置を挙げ、その一つは外資参入の円滑化を促進することです。主に新エネルギー、先進製造、石油化学、電子情報分野で土地・海・エネルギーの利用、計画などを支持し、環境アセスメントの審査・認可手続きを加速して、模範的役割を発揮し、各地でサービス改善を誘導し、投資の円滑化および投資水準を一層高めています。

    デメリット1 長期化する「米中貿易戦争」の影響

     2018年に始まった「米中貿易戦争」の影響により、中国国内の製造業者が経営コストを抑えるため、生産拠点をベトナムやカンボジアといった東南アジア諸国に移す動きが見られました。一方で、在中国日本企業の対米輸出率は低く、2018年にはわずか5.9%でした。米国向けの輸出企業、例えば中国のメーカーに対する日系のサプライヤーは影響を受ける恐れもありますが、中国日本商会会長は「直接的な影響は限定的であり、将来的な影響については観察が必要だ」と指摘しました。

    デメリット2 ビジネス文化の差異

     知的財産権の保護が適切になされない商習慣の違いにより、債権回収が難しい場合があります。また、離職率の高さや、一部地域での生活インフラ整備の遅れなどがあります。上記の行政上の問題と合わせて、中国における慣習や文化についての深い理解と、それらへの対策が必要です。

    デメリット3 言語・文化の違いから発生する問題

     多くの方々が抱えている不安の一つが、言語や文化の差異からくるトラブルです。通訳や現地の人間とのトラブルなどが原因で、企業が多額の損失を出して結局撤退してしまうというケースがあります。これらの問題の根源には日中間の意識の違いがあります。中国に進出し、長期的に利益を出していこうとする日本企業と、 日本の資金と技術欲しさに短期的な視点で動こうとする中国側とではどうしても意識や見解に相違が出てきます。特に合弁や合作などの、中国側のパートナーと手を組む形で事業を行う場合には、お互いの認識のすり合わせに特に気を使わなければいけません。

    参考資料:
    Digima
    https://www.digima-japan.com/knowhow/china/merit
    人民網
    http://j.people.com.cn/n3/2019/0307/c94474-9553587.html
    http://j.people.com.cn/n3/2019/0621/c94476-9590291.html
    中国網
    http://japanese.china.org.cn/business/txt/2019-06/21/content_74908562_3.htm
    Oceanz
    https://www.theoceanz.com/Countryinfo/china_merit

  6. まとめ
     
     進化し続ける中国は世界的な景気減速、貿易摩擦などの影響により、重大な局面を迎えています。今回は「1.中国と中国語の概要」、「2.中国経済の成長と将来性」、「3.中国人の消費能力」、「4.日本企業の海外事業展開」、「5.中国進出のメリット・デメリット」といった5つの視点から中国市場の現状を紹介しました。経済成長性への期待や米中貿易戦争への不安など、こうした複雑な状況を続いている中、新たな商機があるかもしれません。

     『孫子・謀攻』にある一説「彼を知り己を知れば百戦殆からず」の観点からすると、中国と日本の情勢をしっかり把握することが、中国進出への成功確度を高めることにつながるでしょう。また、現地調査や異文化体験を行い、中国の現状を俯瞰しならより相応しい対策を考えていきましょう。

     次回は中国についてさらに深掘りし、私自ら感じた中国の変化を紹介しつつ、賃金・不動産・ナンバープレートについて読み解いていきます。どうぞよろしくお願い致します。

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