日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2016年の訪日外国人旅行客数はおよそ2404万人、過去最高を記録しました(※1)。2020年には東京オリンピックの開催が予定されていることから、これからこの数字はさらに伸びていくと考えられています。そのなかで、事業の拡大や成功を目指すには、インバウンドマーケティングの実現が欠かせません。しかし、この「インバウンドマーケティング」という言葉、なんとなく耳にしたことはあっても、その意味についてきちんと把握できていない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、インバウンドマーケティングについて、その基本から成功のポイントまでご紹介します。
インバウンドマーケティングとは
インバウンドマーケティングとは、その言葉から想像できるようにマーケティングの手法のひとつです。旧来のマーケティングでは、売りたい商品やサービスがある企業が消費者に対し、一方的に情報を流すアウトバウンド型の手法が使われていました。テレビCMや新聞の広告、あるいは訪問営業をイメージすればわかりやすいでしょう。
それに対し、インバウンドマーケティングは情報を一方的に押し付けるのではなく、消費者に主体的に情報を探してもらい、自ら選んでもらうことを目的としています。企業が消費者を「見つける」のではなく、消費者に「見つけてもらう」のです。この手法は2006年にアメリカのHubSpot社CEOブライアン・ハリガン氏が提唱したもので、特定のサービスやツールを指すのではなく、一般消費者が自らの意思や行動によって顧客となっていくその過程や概念を総称し「インバウンドマーケティング」と呼びます(※2)。
インバウンドマーケティングが注目される理由とは
この新たな手法が注目されるようになった理由としては、インターネットの発展と通信機器の普及による消費者行動の変化が挙げられます。インターネットがこれほどまでに広がる以前は、消費者が情報を得る手段は非常に限られていて、消費者はその限定的な情報のなかから自分に必要なものを選ばなければなりませんでした。
しかし、パソコンやスマートフォンが普及したことにより、ネット上にある情報に誰もが容易にアクセスできるようになりました。気になる商品やサービスがあれば「Yahoo!」や「Google」の検索エンジンにキーワードを入れるだけで何千、何万という情報が出てきます。商品情報やほかの消費者のクチコミなど、消費者はこういった情報を基に購入の意思決定をするようになっているのです。
また、この状況が日常のものになったことで、旧来のアウトバウンドマーケティングに対し嫌悪感を持つ人も増えています。「無理やり買わされるのでは」といったネガティブなイメージがついてしまい、そのこともまたインバウンドマーケティングが注目を集める理由になっています。
インバウンドマーケティングの基礎知識とは
インバウンドマーケティングを実現するには、消費者が容易に情報を獲得できるようにしなければなりません。そのため、企業側はさまざまな方法で情報供給をする必要があると言えます。
たとえば、ホームページの開設・拡充はもちろんのこと、ブログやSNSなど、消費者が目にする機会の多いツールに情報を載せるといった方法です。しかし、ただ一方的に情報を流すのでは意味がありません。企業側が出したい情報を出すだけでは旧来の方法と変わりませんから、消費者がどんなことに興味を持ち、どんな情報を得たいと思っているのかを考えることが重要です。消費者にとって、魅力的だと思える情報を流すことが顧客獲得につながるのです。
インバウンドマーケティングを実施するには、ターゲットの絞込みや各種コンテンツの作成など、企業にとっては負担になることも少なくありません。しかし、SNSなど手軽に情報発信できるメディアで展開できること、クチコミなどによって消費者のあいだで情報が拡散していくことから、広告費の削減が可能になるというメリットがあります。費用対効果を考えれば、とても有益な手法と言えるでしょう。
インバウンドマーケティングの手法とは
では、具体的にどんな方法で消費者に訴えていけばいいのでしょうか。ブログやSNSなど情報拡散の方法はいろいろとあり、それぞれ利点があるためどれがより優れていると決められるものではありません。ですが、いずれの手段を用いる場合でも、次の4つのステップを意識してコンテンツを作成することが重要といわれています。
【1】消費者を惹きつける インバウンドマーケティングは消費者自身に情報を探してもらうところから始まります。そのため、まずは消費者に興味を持ってもらわなくてはなりません。消費者が何を求めているのかを考えながら、注意を惹きつけられる情報を供給しましょう。
【2】見込み客へと転換 うまく消費者を惹きつけることができたら、そこから消費者の情報を収集します。多くの場合はEメールアドレスを入手し、その消費者に対して情報提供ができる仕組みを作っています。
【3】顧客化する 見込み客に商品やサービスを購入してもらい、顧客になってもらうステップです。適切なタイミングでアプローチしないと消費者が離れていってしまうことがあるため、見込み客の段階で細かな情報収集をすることが重要です。
【4】顧客を満足させる インバウンドマーケティングでは、サービスや商品を「売って終わり」ではありません。なぜなら、その顧客が新たな顧客や見込み客を作り出してくれる可能性があるからです。そのチャンスを逃さないためにも、顧客満足度を高め、商品や企業のファンになってもらうためのアプローチが必要です。
インバウンド対策の成功のポイント
インバウンドマーケティングとは、情報を消費者に選んでもらい、自らの意思で顧客になってもらう手法です。インターネットの普及によって、これまでのアウトバウンドマーケティングを取り巻く状況に変化が生まれており、インバウンドマーケティングへの注目度が高まっています。
成功させるためには4つの段階があり、それぞれ重要なステップです。その中でも「【1】消費者を惹きつける」が成功しないと顧客化は望めませんから、まずはその段階をクリアすることに力を注ぐべきと言えます。
方法はいろいろありますが、グローバル化と情報が進んだ現代社会においては、自社サイトの多言語化も有効なアプローチになります。なぜなら、情報は全世界に対して開かれており、顧客になりうる消費者は世界のあちこちにいるからです。新たな顧客獲得に向けて、多言語化Webサイトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※1.【日本政府観光局(JNTO)】PRESS RELEASE(報道発表資料) http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170117_monthly.pdf#search=%272016%E5%B9%B4+%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E8%A6%B3%E5%85%89%E5%AE%A2%E6%95%B0%27
※2.【株式会社イノーバ】インバウンドマーケティングとは? 5分でわかる総論と実践のポイント https://innova-jp.com/5min-to-learn-inbound-marketing/