9言語対応のセブン銀行の海外送金アプリ。多言語メンバーからのボトムアップだから使いやすいサービスになる(前編)


キャッシュレスが進んでいるとはいえ、日本ではまだまだ現金が健在。ちょっと急にお金を下ろしたい、連休に備えて現金を用意しておきたい…そんなとき、誰しも一度はお世話になってことがあるのがセブン銀行ATMではないでしょうか。

日本で暮らしているとなじみが薄いかもしれませんが、セブン銀行のATMやアプリは銀行の窓口より海外送金が圧倒的にやりやすいことで知られています。つまり海外送金の「多言語化」が進んでいるのです。

そのセブン銀行の海外送金やアプリを統括するのが、株式会社セブン銀行 常務執行役員 大口さん。今回は大口さんに、海外送金を軸とした外国人戦略、多言語化対応、そして次なるステップである「多文化共生」についてお話を伺いました。インタビュアーはWovn Technologies 株式会社 取締役副社長 上森です。

大口 智文(Oguchi Tomofumi) 株式会社セブン銀行 常務執行役員 早稲田大学政治経済学部卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。 その後、新銀行東京執行役を経て、2008年セブン銀行に入社。 2018年7月より、常務執行役員 海外送金推進部担当役員。

上森 久之(Uemori Hisayuki) Wovn Technologies 株式会社 取締役副社長 北海道出身。デロイト・トーマツにて、新規事業/オープンイノベーションのコンサルティング、会計監査、M&A関連業務などに従事。公認会計士登録。2016年、COOに就任。2019年、取締役副社長に就任。

 

自ら海外体験を、サービス開発の糸口に

上森:
まずは大口さんの経歴を教えてください。

大口:
もともと日本長期信用銀行、のちの新生銀行に約20年勤めました。そこでは融資、金融商品開発、証券化などを担当。いわゆるインベストメントバンカーです。その後2008年にセブン銀行に移籍。リーマンショックの翌日でした。

上森:
2008年頃のセブン銀行さんというと、ちょうどビジネスモデルの変革期だったと記憶しています。

大口:
ちょうど私がセブン銀行に入りました頃が、セブン‐イレブンやイトーヨーカドー以外にもATMを置いていこうという時期でした。今でこそあらゆるところにセブン銀行のATMを置いていただいていますが、当時はグループ外にはまだ成田空港に1台あるだけの時代。今までグループ外へのATM設置はセブン銀行としては経験がなかったのです。そこで法人営業をするための仕組みづくりや、外部との交渉ノウハウなどを部下に指導することが私の最初の仕事でした。

上森:
ATMを拡げるところからはじめられたのですね。現在は海外送金をご担当されていると思いますが、海外系の仕事のきっかけはなんだったのでしょうか?

大口:
私がセブン銀行に入る前年から、日本に観光で来られた外国人の方がお持ちのクレジットカードを使って、セブン銀行のATMから日本円を引き出せるというサービスを始めました。次の展開を考えるときに先ほどの話の延長で、セブン‐イレブン以外にATMを置くとき、観光の観点からはどこにATMを設置するのが適当かという議論が出てきたのです。これが外国人のお客様との最初の接点です。

上森:
ATMの設置についてはどのように思考していったのでしょうか?

大口:
まずはお客様と同じ体験をしなくてはいけないなと思って、私自身が外国人になってみようと。つまり、ちょうど銀婚式の年だったものですから、家内を連れて海外に行くことにしたのです。様々なATMに自分のクレジットカードを入れて、現地通貨を引き出してみました。いざ使ってみると、当時でもかなり簡単に現金が入手できました。

国内でATMから日本円が下ろせるというのは、当時はゆうちょ銀行とセブン銀行しかできなかったので、「海外ではこんなに簡単にできるのに、日本ではほんの一部でしかできないのか…。」と歯がゆかったのを覚えています。だからこそセブン銀行のATMを各地に設置することが、外国人のお客様のためになるとも確信しました。

上森:
海外でのいい体験が今に活かされているのですね。

大口:
もちろん悪い体験も参考にしています。

海外のATMは一部、壁の中に埋め込まれているので、汚いATMだと怖いんです。お恥ずかしい話ですが、切符の券売機をATMと間違ってしまい、カードを中に入れて何も出てこないため、駅員の方に対応頂いたこともありました(笑)。

大口:
しかしだからこそ、こういった見かけにしておくと、海外から来た方は怖いんだな、ということもわかりました。

上森:
ご自身が身を持って体験したからこそ。

大口:
当たり前ですが、やはりお客様の気持ちになることはとても重要です。ついつい「ここに置けばお客様は使っていただけるだろう」と提供者側は考えてしまいがちですが、やはり使う立場になって物事をみると、サービスの提供のプロセスは変わるんだなというのを、実感した次第です。

 

コンビニの機能としてのATM

上森:
サービス利用者の視点にたって開発された機能にはどんなものがあるのでしょうか?

大口:
またあとで説明差し上げますが、セブン銀行には専用のアプリがあります。海外送金をする際、日本人だとつい、たとえば1ドル=110円のようにドルを基準にしますよね。

しかし日本から海外送金する外国人の方のほとんどは、アジア出身。日本で働いて、自国に仕送りをする。お母さんが受け取るその瞬間の喜びみたいなのを想像しながら皆さんお金を送ります。そのとき家族は、一体いくら、何ペソ、何ルピア受け取るのかと、彼らは考えるんです。

それを考えずに日本人の発想で「1ドルいくらだから…」とアプリの最初の画面を作っていたら、恐らく失敗したと思います。

あくまで自分が外国人になったつもりで、このお金を送った時のお母さんの表情というのを思い浮かべながらアプリを作りました。

上森:
またセブン銀行の話をさせてください。他行と比べたときにセブン銀行のATMの強みを教えていただけますか。やはりセブン-イレブンにあるという利便性でしょうか。

大口:
おっしゃる通りです。お客様が行きやすい場所にATMがあるというのは大きな強みです。一方でそれは大変な面もあります。

例えばセブン‐イレブンにおにぎりを買いに行ったのにおにぎりがなかったら、お客様は他のコンビニに行ってしまいますよね。そのため一部の例外を除き、コンビニは24時間365日営業しています。

コンビニの中にATMを置くためには、彼らと同じ考え方をしなくてはなりません。すなわち、ATMも24時間365日稼働させるのです。一般の銀行に行くと、営業していない時間などもありますが、セブン銀行のATMはいつでも使えます。それが強みですね。

またATMを使う方じゃなく、ATMがあるところにいらっしゃる方がお客さまというのも、他行とは違うところです。例えばセブン‐イレブンにお買い物に来られた際に、ちょっと現金がないなと思ってATMを使っていただいたり、ちょっとついでにSuicaのチャージをしていただいたりしています。

上森:
主目的として来るわけじゃなく。

大口:
あくまでそこでお買い物をされる方が、お買い物プラスアルファで必要と思われるものを提供するという考え方です。そのため直接的な収益はもちろんATMを使っていただいた件数に影響しますけれども、根本的な発想はATMがあるところにいらっしゃったお客様のニーズを開発しようというものなのです。

上森:
お金を下ろそうというのを、必ずしも主目的に考えず、生活していく上で必要な入出金ができるようにするというのがコンセプトなんですね。

 

海外送金の課題を解決する

上森:
それではいよいよ海外送金のお話を伺っていきたいと思います。

大口さんが主管されている、海外送金チームのミッションを教えてください。

大口:
まず大前提として、お客様が日本から海外に送金される際にいただく手数料で、しっかり収益を上げていかなくてはなりません。

その上で海外に送金される方の大半は外国人の方々。言葉が悪いかもしれませんが、彼らは日本に「出稼ぎ」に来ています。日本に来たら自国よりもお金が稼げる。それを元手に母国に家を建てたり 、家族の生活を楽にしてあげたいといって日本にいらっしゃいます。そういった方々の困りごとを送金という面から解決し、お客様の満足度を確実に上げていくのがわれわれの組織です。

上森:
セブン銀行設立が2001年。海外送金事業部は創業からあったわけではなく、途中で作られたわけですが、経緯を教えて下さい。

大口:
従前から観光に来られたお客様向けに、現金を下ろせるサービスはあったので、今度は日本に住まわれている方の不便を解決しようという話になりました。実際に想定顧客の方に話を伺うと「日本の銀行は窓口が15時で閉まってしまう」「送ったものの、家族がいつ受け取れるかわからない」「手数料が高い」「日本語でしか対応できない」などの課題が浮かび上がったのです。その課題を解消していかなければとなって、私の前任が立ち上げたのが海外送金推進部の成り立ちになります。

上森:
日本からの送金は大変だったんですね。

大口:
海外送金は担当している多言語メンバーのモチベーションが高いのも特徴です。昔「なんのためにここで働いているのですか?」と聞きました。そうしたらみんな一様に「私たちの国の仲間を幸せにするためです」「正直言って、まだまだこのビジネスは全然広まってないんです。これが広がればもっとみんな便利になって幸せになる」と答えるのです。

たとえば海外送金が大変だった時代に、「地下送金」が社会的に問題に挙がっていました。地下送金というのは、母国に行く知人に頼んで現金を運んでもらう行為で、違法行為です。そのため見つかったら、国に強制送還されてしまうこともあります。しかも現地でもちゃんとお金を渡してくれるかわからない。

強制送還された知人をもつメンバーもいて、「だから、こんなクリーンなビジネスをどんどん広げていくことが、私たちと同じ国から来て働いている人たちに必ず役に立つ」と言うんです。これだけの使命感をメンバーがもっているというのは嬉しかったですね。

後編に続く

(文:peitaro、写真:taisho)


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